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病理今月の1枚 2009年12月

第一回 扁平上皮癌(2009年12月)

症例:猫、雑種、去勢済み雄、13歳 現病歴:右頬部の皮下腫瘤
(耳下腺、下顎腺、耳道との連絡は認められない)

針生検標本の細胞診所見・コメント
 
病理今月の1枚 2009年11月- figure 1.
 
標本中には多数の扁平上皮が孤在散在性あるいは密に採取されています。これらの扁平上皮には、核細胞質解離や大型核などの強い形態異常が観察されます。針生検で腫瘤深部よりこのような扁平上皮が採取されること自体異常であり、扁平上皮癌の存在を強く支持するものです。背景には少数のリンパ球が認められることから、扁平上皮癌のリンパ節転移が疑われます。可能であれば組織生検により診断を進める必要があります。

細胞診の結果を受けて本腫瘤の切除生検が行なわれ、腫瘤が病理組織学的に検査されました。

病理組織所見
この充実性腫瘤の大半は、異型性に富む上皮細胞の島状・索状増殖によって置換されています。写真A(弱拡大)およびB(中拡大)は腫瘤の辺縁部を示します。腫瘤の一部においては、リンパ濾胞を形成するリンパ球の集団が認められ、この腫瘤がリンパ節であることをうかがわせます。
 
病理今月の1枚 2009年11月- figure 2.
 
病理今月の1枚 2009年11月- figure 3.
 
写真C(強拡大)において見られるように、腫瘍細胞は多角形で、明瞭な細胞境界を持ち、豊富な細胞質は好酸性顆粒状です。核は大小不同が著明で、類円形を呈し、核クロマチンは微細で核内に均等に分布しています。核小体は大型で、1~3個観察されます。細胞分裂像は頻繁に認められます。巨大核あるいは複数核を有する腫瘍細胞もしばしば観察されます。間質は豊富な線維組織で構成されています。稀に、腫瘍細胞の間隙に櫛状構造(細胞間橋)も認められます。
 
病理今月の1枚 2009年11月- figure 4.
 
病理組織診断
扁平上皮癌のリンパ節転移

全体的コメント
扁平上皮癌は、角化上皮細胞を起源とする悪性腫瘍です。身体の様々な部位に発生し、犬や猫においては比較的発生の多い腫瘍です。本腫瘍は肉眼的に様々な様相を呈するため、確定診断には病変組織の顕微鏡的検査が必要です。様々な治療オプションが存在しますが、切除可能な腫瘍ならば外科的切除が最も有効な治療法です。初期扁平上皮癌は治療効果が高く、最良の予後を有していますので、早期診断と迅速な治療が鍵となります。

下の表は、扁平上皮癌のおもな発生部位と腫瘍の動態を示したものです。








領域リンパ
節への転移




コメント

頻繁 リンパ節転移はほとんどの場合、未分化な腫瘍や長期間存在した腫瘍で起こる

頻繁 骨浸潤や骨破壊が頻繁に見られる
頻繁 よくある 外科切除後の局所再発がよくある

頻繁 頻繁 よく
ある
最も一般的な遠隔転移臓器は肺、肝臓、脾臓


よく
ある
特になし

頻繁 骨浸潤がよくある
頻繁 よくある よく
ある
単一あるいは複数の腫瘤を形成する 猫では1本あるいは複数の指(趾)へ転移する

頻繁 よくある よくある 骨浸潤や骨破壊がよくみられる 最も一般的な遠隔転移臓器は肺

(参考文献: Squamous Cell Carcinoma, Compendium, March 2009, p.133-142)
文:三井 一鬼(獣医師、アイデックス ラボラトリーズ解剖病理診断医)

注意:この情報は獣医師向けに書かれたものです。
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