アイデックスが10年の歳月をかけ、犬猫専用に研究・開発した腎臓のバイオマーカーIDEXX SDMA®。持続的なSDMAの高値は糸球体濾過量(GFR)の低下を示し、
腎臓病や他の疾患による腎機能への影響を鋭敏に捉えます。健康診断をはじめ、腎臓病の診断サポートや腎機能評価、また、モニタリングとしてIDEXX SDMA®
ルーチンの血液化学検査に含むことで、腎臓をより効果的にケアすることができます。※IDEXX SDMA®は、IDEXX Laboratories, Inc.の登録商標です。

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資料

■ IDEXX SDMA 総合ガイド&症例集を進呈中 — All About IDEXX SDMA Book FAX申込書(PDF/2019.10.1)

New IRIS 犬猫の慢性腎臓病の診断、ステージングおよび治療(PDF/日本語/2019.10.16)
国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS: International Renal Interest Society)のCKDステージ分類が更新されました。対応版PDF(日本語)をダウンロードできます。

● International Renal Interest Society (IRIS) 公式サイトリンク(別ウィンドウで開きます)

■ 甲状腺機能亢進症の猫:IDEXX SDMAはクレアチニンより信頼性の高い腎機能の指標です(PDF)

■ SDMA impacts how veterinarians diagnose and manage kidney disease in dogs and cats (PDF/英語)

参考文献:

日本臨床獣医学フォーラム年次大会 2016 ポスターセッション(優秀賞) 「犬の慢性腎臓病(CKD)のモニタリング指標としての対称性ジメチルアルギニン(SDMA)とBUN, クレアチニンの実証例における比較検討」 たけうち動物病院(神奈川県)岡田夏樹 竹内和義

以下はすべて外部リンクです。(別ウィンドウで開きます)

● A longitudinal study on the acceptance and effects of a therapeutic renal food in pet dogs with IRIS‐Stage 1 chronic kidney disease (IRISステージ1の犬における療法食について)

● Symmetric Dimethylarginine Assay Validation, Stability, and Evaluation as a Marker for the Early Detection of Chronic Kidney Disease in Dogs

● Relationship between Serum Symmetric Dimethylarginine Concentration and Glomerular Filtration Rate in Cats

● Comparison of Serum Concentrations of Symmetric Dimethylarginine and Creatinine as Kidney Function Biomarkers in Cats with Chronic Kidney Disease

● Relationship between Lean Body Mass and Serum Renal Biomarkers in Healthy Dogs

● 2014 ACVIM Forum Research Report Program

Small Animal—Nepthrology/Urology
•NU-27 and NU-28
•NU-41 and NU-42

IDEXX SDMA® についてよくあるご質問

よくあるご質問 印刷用(PDF/2019.10.1更新)


Ⅰ SDMAの背景


1. SDMAとは?

対称性ジメチルアルギニン(SDMA)はアミノ酸のアルギニンがメチル化されたものです。SDMAは、L-アルギニン残基がメチル化されることで生理活性のある非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)とともに産生され、さらに加水分解された後、循環中に放出されます。SDMAは腎臓から排泄される一方、ADMAは大部分が代謝されます。

 

2. なぜSDMAは信頼できるバイオマーカーなのですか?

糸球体濾過量(GFR)との高い相関
SDMAは腎臓から排泄されるため、GFRと非常に高い相関性があります。
クレアチニンよりも早期に上昇
平均的には腎機能が40%失われた時点でSDMAは上昇し、早い場合には腎機能の25%が喪失した時点で上昇します。一方、クレアチニンは、腎機能の75%が失われるまで上昇しません。
腎機能に特異的
クレアチニンに比べてSDMAは筋肉量の影響を受けないため4,5、慢性腎臓病(CKD)の他、甲状腺機能亢進症のような筋肉量が低下する疾患を持った動物の腎機能をより正確に評価できます。

 

3. アイデックスのSDMA検査の特徴はなんですか?

アイデックスはSDMAを商業ベースの検査として開発しました。IDEXX SDMAは犬と猫における有用性が確立されている唯一の動物向けSDMA検査です。SDMAの測定はアイデックス検査センターが有するハイスループットな化学分析機器を用い、免疫学的測定法で行われます。アイデックスは、クレアチニンとともにSDMAをルーチンな血液化学検査の一項目としてご提供しています。

 

4. なぜアイデックスはSDMA検査を開発したのですか? なぜアイデックスはSDMA検査をすべてのルーチン検査項目に加えているのですか?

CKDは犬および猫でよくみられる疾患ですが、既存の検査では腎臓病の早期発見が難しいことが知られています。アイデックスは、より良い獣医療をサポートし、ペットの健康を促進するためのツールとして本検査を開発しました。腎臓病の早期発見は、基礎疾患と併発疾患の治療を手助けする有力なツールとなります。アイデックスは、SDMAがより信頼性の高い診断の一助になると考え、すべての血液化学検査項目に加えています。

 

Ⅱ SDMAとその他の腎機能検査の比較


5. SDMAと糸球体濾過量(GFR)の相関性はどのくらいですか?

SDMAは腎臓から排泄されるため、GFRが低下するとSDMAは上昇します。これまでの研究から、SDMAはGFRと非常に高い相関があることが示されています(犬:R2 =0.90、猫:R2 =0.82)。クレアチニンは一般的にGFRが75%減少した時点で基準範囲を超えますが、SDMAはGFRが平均40%減少した時点で上昇し、早ければGFRが25%減少した時点で上昇することもあります。

 

6. SDMAと既存の腎機能検査との比較

クレアチニン
SDMAは動物において信頼性が高く鋭敏な腎機能の指標です。腎臓病の犬猫で、SDMAはクレアチニンより早期に上昇し、筋肉量の影響を受けません。SDMAは腎機能が平均40%失われた時点で上昇するのに対し、クレアチニンは腎機能が75%失われるまで上昇しません。また、クレアチニンは筋肉の分解産物であるため筋肉量に影響されますが、SDMAは影響されません。

BUN
SDMAと比較すると、反応の遅い腎機能(GFR)のマーカーです。BUNは肝疾患によって低下し、高蛋白食や消化管内出血によって上昇する可能性がありますが、SDMAはGFRの変動によってのみ変化します。

尿比重
尿濃縮能の低下は腎臓病や腎機能障害により進行し、BUNやクレアチニンなどの代謝産物が上昇する前に現れます。この変化はネフロン機能のおよそ67%が失われたときに起こるとされますが、実際は様々です。SDMAは尿濃縮能が低下していない初期の腎臓病でも上昇する可能性があります。尿比重は生理的に変動し、尿を採取した日の飲水量や採取した時間によっても影響を受けます。尿濃縮能の低下は腎臓病に特異的ではなく、糖尿病、肝疾患およびクッシング症候群などでも起こります。一方、SDMAは腎機能の変化のみに影響されます。SDMAの持続的な上昇と尿比重の低下は腎臓病の可能性を示唆しており、早急な精査が勧められます。

尿中蛋白/クレアチニン比(UPC)
UPCは尿検査の一つです。一時的な蛋白尿、尿路感染、炎症または重度の血尿が除外された場合に、尿中の蛋白をより正確に定量するために使用します。腎前性および腎後性の蛋白尿が除外されれば、UPCが犬で0.5、猫で0.4を超える持続的な蛋白尿は、糸球体性または尿細管間質性のCKDの所見と一致します。一方、UPCが2.0を超える場合は、糸球体疾患を強く示唆します。蛋白尿が認められる動物では、UPCは治療への反応および疾患の進行をモニタリングにするために使用されます。
糸球体疾患の場合は、GFRが顕著に変化するかなり前からUPCが上昇する可能性があり、SDMAはステージが進行してGFRが低下するまでは基準範囲内のこともあります。しかし、尿細管間質性疾患の場合、UPCの軽度の上昇を示すか、または全く上昇しない場合があります。このようなケースでは、SDMAなどのGFRマーカーの方が早期に上昇するため、CKDの早期指標となります。

微量アルブミン
微量アルブミンは尿検査の一つです。一般的に生理的な要因によって、一過性の上昇を示すことがある他、尿路の炎症でも陽性になるため、尿路感染、炎症または重度の血尿を除外する必要があります。微量アルブミンが継続してみられ、さらに偽陽性の要因が除外された場合、微量アルブミンは糸球体疾患の最も早い指標となります。微量アルブミンの上昇が認められた場合は、必ずUPCを測定して確認する必要があります。初期の糸球体疾患でGFRが正常な場合は、SDMAは上昇しないことが想定されます。
一方、尿細管間質性CKDにおいてまれに早期の指標となることもありますが、多くの場合、初期のCKDでは微量アルブミンは異常を示しません。このようなケースでは、GFRが低下するにつれて、SDMAは上昇します。

 

7. CKDの診断において、SDMAはクレアチニンの代替になりますか?それとも、SDMAと併せてクレアチニンも測定すべきですか?

クレアチニンもSDMAも相補的であり、腎機能評価にはどちらも必要です。しかし、クレアチニンとは異なりSDMAは筋肉量に影響されないため、削痩した個体ではより信頼性の高い腎機能の指標となります。完全な腎臓の評価には、病歴や身体検査だけでなく、CBC、SDMAを含む血液化学検査および尿検査(外観、尿試験紙による評価および尿沈渣の鏡検、蛋白尿の有無)を含むスクリーニング検査によって評価する必要があります。また、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS: International Renal Interest Society)のCKDステージ分類はクレアチニンを基本にしており、臨床評価に重要です。

 

8. SDMAは蛋白尿が現れる前に上昇しますか? SDMAは蛋白尿と相関がありますか?

SDMAはGFRの優れたマーカーであり、血液を使用した検査です。SDMAは原因にかかわらず、腎機能が低下するにつれて上昇します。つまり腎機能低下を高感度に、かつ特異的に検出するための検査です。一方、UPCは尿を用いて尿中の蛋白質を検出しますが、尿蛋白は尿路系のどこにでも由来する可能性があるため、偽陽性の原因となり得る尿路感染や他の炎症病変、また重度の血尿を除外する必要があります。一過性の上昇は、激しい運動、発熱、極度の低温や高温への曝露、ストレス等の生理的要因により生じることがあります。
糸球体疾患の場合は、GFRが顕著に変化するかなり前からUPCが上昇する可能性があり、SDMAはステージが進行してGFRが低下するまでは基準範囲内のこともあります。しかし、尿細管間質性疾患の場合、UPCの軽度の上昇を示すか、または全く上昇しない場合があります。このようなケースでは、SDMAなどのGFRマーカーの方が早期に上昇するため、CKDの早期指標となります。

 

9. SDMAとGFRは尿比重とどのように相関するのですか?

SDMAはGFRと高い相関を示し、GFRが平均40%喪失した時点で上昇し、早い場合は25%の喪失でも上昇することがあります。尿濃縮能の低下は、典型的にはGFRが平均67%喪失した時点で認められますが、時宜は様々です。例えば、実験的に腎臓病を発症させた猫の場合、GFRと最大尿濃縮との相関は低いものでした。すなわち、高窒素血症を示す猫の中にはGFRが著しく低下しているにもかかわらず、尿濃縮能が維持されている例も認められています。GFRと尿比重との間に相関が認められないことから、SDMAと尿比重の間にも直線的な相関はありませんでした。腎疾患による等張尿が認められる前に、SDMAは通常上昇します。SDMAが高値でクレアチニンは基準範囲内である初期のCKDの犬猫の多くは、尿比重の異常(犬:1.030未満、猫:1.035未満)を示します。しかし、SDMAが高値の犬猫の25%以上では、高い尿濃縮能が維持されています。これはGFRの低下が軽度であった、もしくは尿濃縮能を喪失する時宜が様々なことに起因するものと考えられます。脱水の可能性が除外できる動物でSDMAが持続的に高い場合は、正常な尿濃縮能が示されていても腎臓病の可能性が考えられるため、精査が必要です。

 

10. SDMAの感度および特異度はどのぐらいですか?

腎機能検査のゴールドスタンダードであるGFR測定に対するSDMAの感度と特異度は、GFRの30%低下を閾値とした場合、猫ではそれぞれ100%、91%と報告されています。この研究では2例の偽陽性が示されていますが、実際には25%のGFRの低下が認められています。

 

11. 基準範囲の上限を低くすれば、クレアチニンはSDMA同様に優れているのではありませんか?

Hall et al.による猫の研究では、その施設で設定した基準範囲(0.7-2.1 mg/dL)を使用した場合、クレアチニンの感度はわずか17%でした。しかし、IRIS CKDステージ1におけるクレアチニンの閾値である1.6 mg/dLを使用した場合でも、感度は50%でした。SDMAはGFRと良好な相関があり、クレアチニンよりも感度が高いといえます。

 

12. なぜIDEXXのクレアチニンの基準範囲は、IRISが推奨する閾値と異なるのですか?

検査項目の基準範囲はそれぞれの検査センターでClinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) のガイドラインに従って策定されています。項目の測定は検査機器や試薬、校正機器などの測定方法に影響されるため、すべての方法と項目で世界共通の基準範囲にするということは困難です。CKDの診断は、すべての臨床情報や検査機関が提示している基準範囲と照らし合わせた検査結果の評価、またその他の診断に必要な情報を元に行われます。IRISのクレアチニンの閾値は、個々の検査機関の基準範囲に代わるものというよりは、CKDの管理をサポートするためのステージングに使用されます。

 

13. 組織学的診断に基づく腎臓病の分類(例:糸球体性か尿細管性か、膜性増殖性糸球体腎炎かその他の糸球体腎炎か)とSDMAとの間には関連はありますか?

SDMAでは腎疾患の原因や傷害部位を特定することはできません。SDMAは病変の部位や病因にかかわらず、全体的なネフロンの機能を反映し、GFRが減少すれば上昇します。

 

Ⅲ SDMAの基礎知識


14. SDMAの主な利点は何ですか?

SDMAは腎臓病の犬猫でクレアチニンより早期に上昇します。また、筋肉量に影響されないので、老齢や痩せた動物においてもより正確に腎機能を評価することができます。

 

15. CKDを早期に診断する意義は何ですか? これまでと異なるアプローチが可能になりますか?

早期に診断することで下記の対処が可能になります。
●原因、特に治療可能な感染や閉塞、毒物や腎毒性のある薬物への曝露などに関する精査を行うことができる。また、水和状態や血圧、甲状腺を評価し、併発している疾患や状態を把握することができる。
●基礎疾患や併発疾患の管理や治療を行うことができる。また薬剤の処方や麻酔処置に注意を払い、さらなる腎臓への障害を避けることができる。
●個々の動物の基礎疾患および併発疾患に応じたモニタリングを行うことができる。詳しくはIDEXX SDMAプロトコルをご覧ください。

 

16. SDMAの使用はCKDに限られますか? それともAKIでも使用できますか?

SDMAはGFRと相関します。従って、AKIでもSDMAは上昇します。GFRが75%減少しないと上昇がみられないクレアチニンと異なり、SDMAはGFRが平均40%喪失した時点で(早い場合には腎機能が25%低下した時点で)上昇するため、AKIや腎盂腎炎のような活動性の疾患においても、SDMAの方がより鋭敏に上昇する可能性が高いと考えられます。また、動物が臨床症状を示し高窒素血症になるまでに、SDMAは通常上昇します。

 

17. SDMAの基準範囲とその設定方法を教えてください。

犬と猫の基準範囲は同じ0–14 μg/dLです。基準範囲はCLSIガイドラインに従い設定しています。1歳以上の成犬および成猫で、病歴および身体検査から健康と判断された個体で検証を実施しました。これらの動物の性比は等しく、様々な品種や体格が含まれています。

 

18. 子犬および子猫の基準範囲はありますか?

子犬の基準範囲(0-16 μg/dL)は、成犬の基準範囲(0-14 μg/dL)よりやや高く設定されています。ほとんどの子犬(90%)は成犬の基準範囲内に収まります。
子犬でのSDMAのわずかな高値の原因は現時点では不明ですが、蛋白質アルギニンのメチル化はシグナル伝達、mRNAのスプライシング、転写制御、DNA修復および蛋白質の転移などの生理的役割を担っており、成長期の動物ではこれらの活動が活発であるため、SDMAが高値を示すと推測されます。
子猫は、成猫の基準範囲と同じです。

 

19. 品種による違いはありますか?

現在のところ、グレイハウンドでのみ確認されており、SDMAの中央値はグレイハウンドでは若干高め(約1 μg/dL)の値を示します。しかし、健康で腎機能が正常なグレイハウンドの大部分は、SDMAは基準範囲内です。また、グレイハウンドではクレアチニン濃度が基準範囲より若干高いことがしばしば認められますが、これは筋肉量が多いためと考えられています。グレイハウンドではクレアチニンとSDMAが基準範囲の上限またはやや上限を上回ることがあるため、SDMAやクレアチニンの結果は尿検査と併せて評価する必要があります。グレイハウンド以外の犬種では品種差は確認されていません。

 

20. SDMAの上昇は何を意味していますか?

基準範囲(成犬および成猫:14 μg/dL 以下、子犬:16 μg/dL 以下)よりも持続的に高値であれば、腎機能(GFR)が低下していることを示唆しています。大部分の初期腎臓病の動物では、SDMAは15–19 μg/dLを示します。腎機能の低下とともにSDMAは上昇するため、より進行したステージではSDMAは20 μg/dL以上の高値を示し、多くの場合、クレアチニンの上昇も認められます。50 μg/dL以上の高値は全検体の1%未満であり、本測定系の測定限界は100 μg/dLです。

 

21. 既にCKDが診断されている動物に対して、SDMAを測定する意義はありますか?

CKDの動物は加齢とともに筋肉量が低下します。SDMAはクレアチニンとは異なり筋肉量の影響を受けないため、老齢の動物ではより感度の高い腎機能の指標となります。従って、SDMAはステージが進行し、筋肉量が減少していく場合において腎機能の正確なモニタリングに有用です。
SDMAはCKDの診断およびステージングの補助としてIRISのガイドラインに採用されています。クレアチニン単独では削痩した動物のステージを過小評価する可能性があるため、SDMAを併用することでより正確なステージングと治療の手助けになる可能性があります。

 

22. SDMAを検査する際の検体は何ですか?

SDMAは血清(推奨)とヘパリンリチウム血漿での検査が可能です。

 

23. 乳び、溶血、黄疸はSDMAの結果に影響を与えますか?

一般的な乳びや溶血、黄疸では、SDMAは影響を受けません。検査センターでSDMAを測定する場合、重度の溶血では偽性の低値を示すことがあります。一般的な血液化学検査項目と同様に、最良の結果を得るには、乳びや溶血のない良好な検体の使用が推奨されます。

 

24. IDEXX SDMA(外注検査)の検査結果報告時間(TAT)はどのくらいですか?

検査センターにおけるIDEXX SDMAの結果はすべての血液化学検査のルーチンパネルに含まれており、他の血液化学検査パネルの測定時間に影響を与えないため、TATは血液化学検査パネルと同じです。また、IDEXX SDMAを単項目検査としてご依頼いただいても、検体到着(受付)日を0日とし通常2営業日以内に結果をお返ししています。

 

25. 検体の保存期間の影響はありますか?

SDMAは冷蔵で14日間安定です。検査センターで測定する場合、凍結融解を繰り返さなければ、冷凍検体は30日間は安定です。

 

Ⅳ SDMAに対する腎疾患以外の要因の影響


26. 腎臓病以外でSDMAが上昇する要因や病態はありますか?

SDMAはGFRに強い相関があるため、GFRが低下するとSDMAは上昇します。脱水のない個体で見られる持続的なSDMAの上昇は腎臓病に特異的です。また、腎前性もしくは腎後性の要因によってGFRが低下する場合においてもSDMAは上昇します。

 

27. 脱水はSDMAに影響を与えますか?

脱水が腎前性の高窒素血症を起こし、GFRが減少しているのであれば、SDMAも上昇する可能性があります。

 

28. 食事中のアルギニン量はSDMAに影響を与えますか?

食事中のアルギニン量とSDMA濃度の関係は直接検証していませんが、犬猫における血清アルギニン濃度とSDMA濃度に相関がないことを確認しています。ヒトでは、L-アルギニンのサプリメントを長期間服用している妊娠高血圧腎症の女性で、血清中のSDMA濃度に影響はありませんでした。

 

29. 食事はSDMAに影響を与えますか?

BUNと異なり、食事中の蛋白含有量や消化管内出血がSDMAに直接影響を与えることはありません。

 

30. 薬物はSDMAの検査結果に影響を与えますか?

SDMAはGFRとよく相関するため、GFRを増加させる薬物の場合、SDMAは低下します。一方、低血圧を引き起こす鎮静剤などによりGFRを低下する場合、SDMAは上昇します。

 

31. SDMAは甲状腺機能亢進症の猫で腎臓病を診断するのに役立ちますか? SDMAは甲状腺機能亢進症の猫において、治療後に高窒素血症を発症するかを予測できますか?

無治療の甲状腺機能亢進症の猫はGFRが増加し、筋肉量が低下しているために併発するCKDを隠してしまいます。SDMAは甲状腺機能亢進症の治療が腎機能に及ぼす影響を予測し、どの猫が甲状腺機能亢進症の治療後に高窒素血症は発症するかを特定するのに役立ちます。研究によれば、甲状腺機能亢進症の治療の前からSDMAが上昇しクレアチニンは基準範囲内だった個体で、治療後に高窒素血症になった例が約半数いました。甲状腺機能亢進症治療前にSDMAが正常値だった場合、治療後に高窒素血症になる可能性は除外できないものの、クレアチニンよりは正確に甲状腺機能亢進症の猫の腎臓病を特定することが可能であり、SDMAを測定することで事前に腎機能について十分気を付けることができます。

 

32. 副腎皮質機能亢進症や糖尿病などの内分泌疾患はSDMAに影響を与えますか?

内分泌疾患自体が原因でSDMAが上昇することは確認されておらず、GFRが正常であればSDMAも基準範囲内を示します。副腎皮質機能亢進症かつ低・等張尿が確認された犬のSDMAは、いずれも基準範囲内でした。また、糖尿病の動物で腎臓病の兆候がないものに関しても、SDMAは基準範囲内でした。これらの内分泌疾患の動物でSDMAの上昇を認めた場合は、腎臓病の併発が疑われます。

 

33. 非高窒素血症の動物が多飲多尿(PU/PD)を示している場合、SDMAは初期の腎疾患の可能性を除外するのに役立ちますか?

SDMAが基準値範囲内の動物が腎尿細管機能障害やネフロンの喪失に関連した尿濃縮能の低下や多飲多尿の症状を示す可能性は低いと考えられます。典型的には、腎機能障害による多飲多尿は、平均して67%の顕著なGFRの低下がある場合に見られ、尿比重も異常値を示します(犬:1.030以下、猫:1.035以下)。
子宮蓄膿症や菌血症、グルココルチコイド、その他の代謝性疾患により二次的な腎性尿崩症を起こしている動物ではGFRは正常と考えられるため、SDMAも基準値範囲内を示すと考えられます。このような動物では、抗利尿ホルモンに対する尿細管抵抗の結果、低張尿や等張尿のような希釈尿が出ています。

 

34. SDMAは膵炎や炎症性腸疾患(IBD)などの炎症性疾患で上昇しますか?

SDMAは膵炎や炎症性腸疾患(IBD)などの炎症では上昇しません。SDMAは腎臓病に特異的であり、膵炎単独では上昇せず、犬や猫の膵炎の特異的診断マーカー(Spec cPL™/Spec fPL™)と相関を示しません。IBDの猫においても、SDMAはGFRにのみ相関を示し、消化器疾患の程度とは相関を示しませんでした。ヒトの研究では、腎機能障害を併発していない限り、急性炎症反応、肝疾患、脳卒中または心筋梗塞への影響は確認されませんでした。もし、IBDや膵炎、その他の全身性疾患の動物でSDMA猫の甲状腺機能亢進症が上昇している場合は、腎臓病の併発が示唆されます。

 

35. がんはSDMAに影響を与えますか?

がんやその他の病態によってGFRが平均40%低下した場合、SDMAは上昇します。がんの犬猫では、がん細胞の腎臓への浸潤や循環血漿量の枯渇、腫瘍溶解症候群、閉塞や敗血症、または抗がん剤の腎毒性が原因となって、GFRの低下が同時に起こることがあります。そのため、SDMAが上昇したがんの動物は慎重な管理が必要です。
クレアチニンはGFRが著しく低下(最大75%)した際に上昇するため、クレアチニン単独では早期の腎障害を見過すことがあります。ヒトでは多くのがん関連因子がクレアチニンに影響を与える可能性が指摘されており、がん悪液質による産生量の減少、蛋白摂取量の減少、または抗がん剤そのものが原因となって、クレアチニンの信頼性が低くなる可能性があります。そのため、ヒトではがん患者の腎臓病を確認するにはバイオプシーが必要となります。
19頭のがんの犬猫における研究では、SDMAが高値のすべての個体でがんの浸潤による腎臓の構造的障害が確認された一方で、基準範囲内の個体では病理組織学的変化は認められませんでした。また、クレアチニンはすべての個体が基準範囲内でした。がんの犬猫において、SDMAはクレアチニンよりも正確に腎機能を評価できる可能性があります。

 

Ⅴ IDEXX SDMAの結果解釈と対処方法


36. SDMAの高値の割合はどのくらいですか?

腎臓病は一般的な病気であり、生涯において猫では3頭に1頭、犬では10頭に1頭が何らかの腎臓病に罹患します。最近の研究では、より多くの腎臓病が診断されるようになり、これまで罹患率が過小評価されてきたことが示唆されています。実際にIDEXXの検査データでも、加齢に伴いSDMAが高値を示す割合が増加しています。


約11%の犬でSDMAの高値が確認されています。加齢に伴ってSDMAの高値の割合は増加し、1-6歳および7-9歳ではそれぞれ7%、10-11歳では11%、12歳で16%と徐々に割合が高くなり、15歳以上では最大42%に達します。


約26%の猫でSDMAの高値が確認されています。犬と同様に、加齢に伴ってSDMAの高値の割合は増加し、1-5歳では10%、6-9歳ではそれぞれ13%、10-11歳では17%、12-13歳では24%、14歳で33%と徐々に割合が高くなり、18歳以上では最大67%に達します。

 

37. SDMAが高値であった場合、どうすればいいですか?

腎機能(GFR)が低下していることを示唆しています。SDMAが基準範囲を超えている場合は、IDEXX SDMAプロトコルを用いた検査、管理、モニターが必要です。
初診時に行っていない場合は、IDEXX SDMAプロトコルを用いて、はじめに尿検査を行うことが推奨されます。

SDMAが20 µg/dL 以上の場合
明らかな高値であり、腎臓病が考えられるため、IDEXX SDMAプロトコルを用いた早急な対処が推奨されます。

SDMAが15-19 µg/dLの場合
わずかな高値であり、生理的変動や初期の腎臓病の可能性が考えられるため、腎臓病を疑うその他の異常所見がないかを確認します。例えば、臨床症状や身体所見、基準範囲内でのクレアチニンの上昇や高窒素血症、尿性状の変化(尿比重の異常、沈渣、蛋白尿の有無)、画像診断による腎臓の形態変化などです。これらの所見は、腎臓病を示唆するものであり、IDEXX SDMAプロトコルを用いた検査、管理、モニターが推奨されます。

検査:腎臓の基礎疾患に対する検査。特に感染、閉塞、毒物または腎毒性のある薬物への曝露といった治療可能な病態を把握するとともに、水和状態や血圧、甲状腺を検査し併発疾患について評価します。

管理:投薬による予防措置や麻酔時など、腎臓への傷害を避けるため、基礎疾患や併発疾患に対する治療、管理を行います。

モニター:原因となっている基礎疾患や併発疾患に対して治療を開始し、モニタリングします。

 

38. SDMAとクレアチニンがともに基準範囲内であった場合、どうすればいいですか?

腎機能(GFR)が低下している可能性は低いと考えられます。しかし、SDMAとクレアチニンのどちらか一方でも基準範囲の上限にある、もしくはクレアチニンが基準範囲内でも上昇傾向が認められる場合は、初期の腎臓病を除外することはできません。もし、腎臓病を疑う症状がある場合は、その他に腎臓の異常所見がないかを確認するために、尿検査や画像検査を含めた総合的な検査が考慮されます。

 

39. SDMAが基準範囲内でも、クレアチニンが高値であった場合、どうすればいいですか?

このような結果の組み合わせはまれです。
各項目に影響を与える因子として、重度の溶血がある場合にSDMAは偽性の低値を示すことがあります。また、肉製品を摂取した場合は、食後にクレアチニンが上昇することがあります。
なお、はっきりとした理由は不明ですが、よくコントロールできている安定したCKDでは、高いクレアチニンに対し、基準範囲内のSDMAが見られることがあり、病状が進行するにつれて結果の乖離は解消されると考えられます。もし、これらに当てはまらない場合は、腎臓病の可能性は否定できないため、BUN、クレアチニン、尿検査や画像検査を含めた総合的な評価を行ってください。

 

Ⅵ IDEXX SDMAが高値の場合に行う追加検査


40. 腎臓病に一致する尿検査所見とは、どのようなものですか?

腎臓病と一致する尿の変化には次のものが含まれます。

尿比重の異常:犬は1.030未満、猫は1.035未満。

蛋白尿:少量の蛋白尿であれば生理的に見られることもあります。著しい蛋白尿が検出され、非活動性沈渣(蝋円柱や硝子円柱のみが検出される沈渣)がある場合は、正確な評価とモニタリングを行うために蛋白の定量を目的としたUPCの測定が推奨されます。

尿糖(高血糖を伴わない):腎盂腎炎やレプトスピラ症などの腎への感染による尿細管の損傷、腎毒性物質(例:抗てんかん薬や重金属)への曝露、その他まれではありますが先天性の腎性糖尿が示唆されます。

活動性沈渣(白血球、赤血球、細菌が認められる沈渣):無菌的に採取した尿検体が膿尿や細菌尿である場合は、尿路感染症が示唆されるため、尿の細菌培養試験と薬剤感受性試験が推奨されます。血尿や結晶、上皮細胞の意義は、尿の採取方法や保管方法によって異なります。

 

41. SDMAが高値の動物に対して画像検査を推奨するのはなぜですか?

腎結石、腎盂腎炎、腎腫瘍、腎異形成、糸球体腎炎などによる腎臓の構造的異常の有無を確認するために、画像診断が推奨されます。レントゲン検査と腹部超音波検査は、腎臓の大きさと構造を評価するための最良の組み合わせです。

 

42. SDMAが高値で無症状の犬に対してレプトスピラ症の検査を行う場合、いつ、どのような検査が行うのが適切ですか?

レプトスピラ症は、AKIおよび血管炎に関連する肝疾患を引き起こします。典型的ではありませんが、症状が軽度な場合、慢性経過を辿ることがあります。慢性レプトスピラ症の検査は、レプトスピラ症の予防接種を定期的に受けておらず、野生動物やレプトスピラに汚染された水との接触があり、熱性疾患の病歴の可能性がある動物に推奨されます。尿検査所見には、糖尿、蛋白尿、顆粒円柱、血尿、膿尿などがあります。レプトスピラの抗体検査とともに、全血と尿による抗原検査とPCR検査が推奨されます。レプトスピラ症は進行性の人獣共通感染症であるため、AKIやCKDの犬に適切なレプトスピラ症の検査を行うことは重要です。

 

43. SDMAが高値で無症状の犬に対してライム病の検査を行う場合、いつ行うのが適切ですか?

SNAP 4Dx スクリーニング(外注検査サービスにてご提供)によるライム病の検査は、蛋白尿を呈しているすべての犬に適しています。ライム病による腎炎は、急性、安定、または進行性の蛋白喪失性腎症として現れることがあります。ライム病の急性症状は非特異的であり、嘔吐や食欲不振、元気消失が見られることがあります。一部の犬では、不顕性または慢性徴候を示し、数週間~数ヵ月かけてゆっくり進行することがあります。尿検査では蛋白尿が見られ、様々な程度の濃縮尿や血尿、膿尿、ビリルビン尿、糖尿が見られます。ライム病腎炎を早期に発見、治療することで、致命的な合併症を避けられる可能性があります。

 

44. SDMAが高値で蛋白尿を呈している犬に対してSNAP 4Dx スクリーニングを行うことが重要なのはなぜですか?

SNAP 4Dx スクリーニング(外注検査サービスにてご提供)を用いて糸球体腎炎を引き起こす可能性のある感染症を検査することは、IRISによっても推奨されています。SNAP 4Dx スクリーニングでは、ライム病、犬糸状虫症、エーリキア症(Ehrlichia canis、E. ewingii)、アナプラズマ症(Anaplasma phagocytophilum、A. platys)の6つの節足動物媒介性疾患の検査が可能です。

 

45. SDMAが高値で蛋白尿を呈している猫に対してスナップ・FIV/FeLVコンボや犬糸状虫に対する検査を行うことが重要なのはなぜですか?

レトロウイルスの検査は、飼育形態や既往歴、これまでのウイルス感染状態にかかわらず、すべての病気の猫に対して行うことが米国猫医学会によって推奨されています。FeLVとFIVはいずれも、リンパ腫や骨髄増殖性疾患のリスクを高めますが、どちらも糸球体腎炎を引き起こす可能性があります。また、犬糸状虫症も糸球体腎炎を引き起こす可能性があります。FIVとFeLVに関しては、スナップ・FIV/FeLVコンボにてスクリーニング検査が可能です。

 

Ⅶ 腎臓病の管理におけるIDEXX SDMAの影響


46. IRISはCKDのガイドラインにSDMAを採用していますか?

IRISのCKDガイドラインにはIDEXX SDMAが含まれています。SDMAはIRIS CKDステージ1の犬猫の発見を助け、削痩した動物のCKDを正しく分類するのに役立つツールとして、獣医腎臓病学を専門とする15人の獣医師から構成されるIRISによって認められています。診断と治療におけるSDMAの解釈は、2015 IRIS CKDガイドラインに採用されています。

血中のSDMA濃度は、血中クレアチニン濃度よりも鋭敏な腎機能のバイオマーカーです。14 µg/dLを超える持続的なSDMAの上昇は、腎機能の低下を示唆し、クレアチニンが1.4 mg/dL未満の犬または1.6 mg/dL未満の猫をIRIS CKDステージ1と見なす根拠の一つとなります。

ボディコンディションスコアの低いIRIS CKDステージ2の動物において、SDMAが25 µg/dL以上ある場合は、腎機能が過大評価されている可能性があります。このような動物には、IRIS CKDステージ3に準じた治療法が推奨されます。

ボディコンディションスコアの低いIRIS CKDステージ3の動物において、SDMAが45 µg/dL以上ある場合は、腎機能が過大評価されている可能性があります。このような動物には、IRIS CKDステージ4に準じた治療法が推奨されます。

ガイドラインへのIDEXX SDMAの追加は、初期のSDMAデータに基づく予備的なものです。ガイドラインの内容は、今後更新される可能性があります。

 

47. SDMAが高値の動物にはどのような治療が推奨されますか?

AKIが確認された場合は、基礎疾患の適切な治療が推奨されます。CKDと診断されSDMAとクレアチニンがともに高値の場合でも状態が安定していれば、IRISのCKDガイドラインに沿ってステージを分類することが推奨されます。その後は、初期腎臓病の管理に関する自身の臨床経験に従い、適切な治療法を決定するために現在のIRIS治療ガイドラインをご利用ください。

 

48. SDMAが高値の場合、腎臓療法食を開始した方が良いですか?

食事療法は犬や猫のCKD管理において重要です。IRIS CKDガイドラインによれば、IRIS CKDステージ1のうち持続的な腎性蛋白尿(UPC 犬:0.5以上、猫:0.4以上)を呈する場合、およびIRIS CKDステージ2から療法食が推奨されています。
一方で、非蛋白尿性のIRIS CKDステージ1の犬猫についても、腎臓療法食の有用性が報告され始めています。最近発表された2つの研究では、初期のCKDの犬と猫に腎臓療法食を与えることは有益であると報告しています。高齢動物用のペットフードを与えられた動物では、飼い主が選んだペットフードを食べていた動物に比べて、腎機能の改善や安定化を示す可能性が高かったと報告されています。もう1つの研究では、IRIS CKDステージ1の犬に1年間腎臓療法食を与えたところ、すぐに療法食に慣れ、腎機能の改善が報告されています。
腎臓療法食は酸化剤を含まず、蛋白量のコントロールおよびリンの制限をしている他、抗酸化剤とω-3脂肪酸が添加されているものもあります。CKDの管理には体重と筋肉量の維持が不可欠であるため、適切なカロリー摂取が求められます。食欲がまだ良好なときは、新しいペットフードへの移行がスムーズなため、できるだけ早い時期に腎臓療法食を開始するのが理想的です。

 

49. 腎臓療法食がCKDの進行を遅らせる、または生存期間に影響を与えることを示す科学的根拠はありますか?

IRIS CKDステージ2または3罹患猫に維持食または腎臓療法食を与えた2つの研究があります。1つ目の研究では、腎臓療法食を与えられた猫は維持食を与えられた猫よりも2.4倍長生きでした(平均633日 対 264日)。2つ目の研究では、2年間追跡調査を行い、その間に腎臓療法食を与えられた猫では、腎臓病に続発する重度の疾患である尿毒症に進行した個体、もしくは腎臓病で死亡した個体はいませんでした。一方で、維持食を与えられた猫では、20%が尿毒症に発展し、22%が腎臓病で死亡しました。犬を対象とした同様の研究では、腎臓療法食を与えられた犬における尿毒症の発症リスクは75%低下し、さらに2年間の研究終了時に、維持食を与えられた犬の65%が腎臓病で死亡したのに対し、腎臓療法食を与えられた犬では33%であることがわかりました。腎臓療法食を与えられた犬は、維持食を与えられた犬よりも13ヵ月以上長く生きました。

 

50. SDMAが持続的に高値を示している動物では、NSAIDsを避けるべきですか?

NSAIDsやその他の腎毒性のある薬物、または腎臓から排泄される薬物は、可能であれば中止するか、慎重に投与できる場合のみ使用してください。

NSAIDsがCKD罹患動物のQOL維持に必要な場合は、慎重に使用してください。NSAIDsはAKIの動物には絶対に使用しないでください。NSAIDsを処方する場合は、飼い主に適切なインフォームドコンセントを行ってください。

CKDの動物にNSAIDsを使用する場合は、以下が理想的です。
● オピオイド、体重コントロールおよびサプリメントなどの他の疼痛管理方法を最初に試す。
● 薬用量は最小用量で使用するか、または間欠的に使用する。
● NSAIDsの使用中は、全身麻酔、塩分制限、利尿薬の使用、脱水症状などのリスク因子を避ける。
● 二次的な消化器障害による脱水を避けるため、消化管への副作用が少ないNSAIDsを選択する。
● NSAIDs開始後および用量調整の前後は、血液検査と尿検査で肝機能と腎機能の変化をモニタリングする。
● 副作用が疑われるまたは確認された場合は、NSAIDsの使用を中止する。

 

51. 術前検査でSDMAが高値だった場合は、どうすべきですか? このまま手術を行うことはできますか?

術前検査でSDMAが高値であった場合は、IDEXX SDMAプロトコルに従って、腎臓病が疑われるかどうか、またどのような検査、管理、モニターが必要かを判断することが推奨されます。基礎疾患や併発疾患が特定された場合、適切に治療し、麻酔前に状態を安定させることが重要です。緊急手術または腎臓病が診断された後に麻酔が必要と判断された場合は、腎臓への負担が少ない麻酔プロトコルが推奨されます。

 

Ⅷ 腎臓病罹患動物のモニタリングのためのIDEXX SDMAの使用


52. SDMAが高値の場合、いつ再検査を行えばいいですか?

SDMAが高値の動物は、特定された基礎疾患や併発疾患に対する治療に基づいて、適切にモニタリングすることが推奨されます。罹患動物の状態が安定していても、基礎疾患や併発疾患が特定されていない場合は、IDEXX SDMAプロトコルに従って2〜4週間後に再検査を行うことが推奨されます。この再検査で、SDMAが基準範囲内に戻った場合、初回の高値は生理的変動か一時的な腎機能の低下だった可能性があります。更なる再検査は臨床状態と開始した治療によって異なります。SDMAが高値であるものの状態が安定している場合は、IRISのガイドラインに従ってCKDを診断、ステージを分類し、適切に治療することが推奨されます。SDMAが持続的に上昇する場合は、進行性の腎障害の可能性が高いため、原因や治療方針を決定するための追加検査が推奨されます。詳細については、セクション5「IDEXX SDMAの結果解釈と対処方法」をご覧ください。

 

53. SDMAはCKDのモニタリングや治療効果の判定に役立ちますか?これは、BUNやクレアチニンの変化と同じ、もしくは似ていますか?

腎機能(GFR)が治療によって改善されるとSDMAは低下し、逆に治療が奏功せず腎機能が悪化すれば上昇するといったように、一般的には、BUNやクレアチニンと似たような挙動が見られるはずです。しかし、BUNは食事や水和状態などの腎前性因子の影響を受けやすいため、BUNの変化は特異性が低く、解釈が困難な場合があります。また、クレアチニンは筋肉の分解産物であるため筋肉量に影響されます。そのため、進行したCKDによく見られるような筋肉量の低下した動物では、筋肉量に影響されないSDMAはクレアチニンよりも信頼性が高く鋭敏な腎機能の指標となります。

 

54. IDEXX SDMAは経時的または繰り返しの検査でどの程度変化しますか? また、意味のある変化とはどういうものですか?

同一個体で1週間間隔もしくはそれ以上に渡って経時的に測定した場合、クレアチニンやGFRと同様に、SDMAは15-20%の生理的変動を示します。例えば、生理的変動を20%とし、1回目の測定でSDMAが14 µg/dLであった場合は、生理的変動によって再測定時には11-17 µg/dLとなることがあります。

 

55. クレアチニンは基準範囲内で、以前の検査でSDMAが高値でした。再検査時にSDMAが基準範囲内に戻った場合、腎機能は正常になったと判断できますか?

症状が安定しており、明らかな臨床的変化がなく、治療や食事の変更もない場合、再検査時のSDMAが基準範囲内かつ前回の検査値との差が20%未満であれば、それは生理的変動の可能性が高いです。同一個体で1週間間隔もしくはそれ以上に渡って経時的に測定した場合、クレアチニンやGFRと同様に、SDMAは15-20%の生理的変動を示すことがあります。

尿の異常や腎臓病の証拠が以前の精密検査で発見されなかった場合、前回は生理的変動か一時的な腎機能の低下であった可能性が考えられます。必要に応じて基礎疾患や併発疾患をモニタリングします。4-6ヵ月後に再検査するか、腎臓病の新たな症状が現れた場合は、その時点で再検査することを検討してください。

過去に尿の異常や腎臓の異常所見が発見されている場合、一過性のSDMAの低下では腎機能が安定したとは言えません。そのため、元の治療計画に従ってモニタリングすることが適切です。活動的な尿路障害が確認されなかった場合は、罹患動物のCKDは安定している可能性があり、2-3ヵ月後に再検査し、モニタリングを継続してください。もし、進行症状や尿の異常が現れた場合は、その時点で再検査することを検討してください。

 

56. クレアチニンは基準範囲内で安定しているが、以前の検査でSDMAは高値でした。再検査時もSDMAが高値を示す場合はどうなりますか?

罹患動物の体重が減少していないかを確認します。SDMAは筋肉量に影響されませんが、クレアチニンは影響を受けるため、老齢動物または削痩した動物ではSDMAはクレアチニンよりも信頼性が高く鋭敏な腎機能の指標となります。20%までのSDMAの変化が一過性であれば生理的変動の可能性がありますが、持続的に認められる、またはこれよりも大きな変化がある場合は、腎臓病の真の進行性変化を示している可能性が高いです。

持続的で活動的な腎障害や進行原因を特定するためには、身体検査(体重やボディコンディションスコアの判定など)、正確な稟告の聴取(腎毒性のある薬物の摂取や物質への曝露など)、尿検査が推奨されます。また、この検査でこれまで発見できなかった基礎疾患や併発疾患が特定される場合もあります。